Pancreatic Cancer
膵臓がん
膵臓がんとは?/特徴/膵臓の働き/原因・リスク/危険因子/初期症状/画像所見/異常値/検査/治療
目次
膵臓がんとは?
What is Pancreatic Cancer
病気の基本を押さえ、適切なフォローにつなげましょう。
膵臓がんは膵臓内の細胞が異常増殖して形成される悪性腫瘍です。膵臓は胃の後ろに位置し、消化酵素を分泌する外分泌機能と、インスリンなどのホルモンを分泌して血糖値を調整する内分泌機能を持つ重要な臓器です。膵がんの多くは膵管の上皮細胞から発生するのが一般的です。
初期症状が出にくく、診断時には進行していることが少なくありません。がん死亡の上位に挙がる要因の1つです。
また糖尿病の新規発症や既存糖尿病の急な悪化が契機になることがあり、進行すると腹痛・背部痛・腹部膨満感・食欲不振などが現れますが、特徴的でないため注意が必要です。
膵臓がんの特徴
Pancreatic Cancer
ハイリスク例・膵臓がんの特徴・早期発見が難しい背景
このような方は一度ご相談ください
- 糖尿病をお持ちの方/糖尿病が急に悪化した方
- 家族に膵臓がんの方がいる
- 画像で膵嚢胞(IPMNを含む)や膵管の拡張・狭窄・途絶、限局的萎縮・くびれ、膵石灰化(慢性膵炎・膵石)などを指摘された
- 採血で膵酵素上昇や腫瘍マーカー上昇を指摘(発見の“契機”となり得ます)
膵臓がんの特徴
- 進行が早い: 診断時に既に進行のことが多い
- 症状が出にくい: お腹の奥にあるため小さいうちは症状に乏しい
- 他疾患に似た症状: 胆石症や胃炎などと症状が類似し気づきにくい
発見しづらい理由
- 臓器の位置が深い: 触診や一般的なエコー検査では十分な観察が難しい場合がある
- 初期症状があいまい: 食欲不振・軽い不快感など非特異的
- 検査の難しさ: 詳細画像検査が必要だが機会が限られがち
膵臓の働き
Pancreatic Cancer
消化を助ける外分泌機能と、血糖を調整する内分泌機能の2つ
食べ物の消化を助ける
膵臓は消化液を作り、脂肪・タンパク質・炭水化物を小さく分解して栄養吸収を助けます。
血糖値を調整する
インスリンなどのホルモンを分泌し、血糖が高い/低い時にそれぞれ適切に調整します。膵機能が低下すると消化不良や血糖異常を招きます。
原因とリスク
Causes and Risks of Pancreatic Cancer
遺伝子変異を基盤に、加齢・生活習慣・遺伝的要因が関与します。
膵臓がんの原因(遺伝子変異)
膵臓がんは遺伝子の異常(変異)が積み重なって発生します。人の遺伝子は父母から1セットずつ受け継ぎ、両方の遺伝子に異常が起こると発症しやすくなります。
加齢
加齢に伴いDNA損傷が蓄積し、修復が追いつかず変異が生じやすくなります。
環境要因
多量飲酒・喫煙・肥満・糖尿病などの生活習慣がリスクを高めます。
遺伝的要因
家族歴があると遺伝性変異を受け継ぐ可能性があり、加齢・生活習慣と重なってリスクが上昇します。
膵臓がんの初期症状と発覚のサイン
Symptoms of Pancreatic Cancer
症状が出る前の発見が重要です。以下のサインに注意しましょう。
- 持続的な腹痛・背中の痛み(食後に増悪することあり)
- 原因不明の体重減少や食欲不振
- 黄疸(胆管圧迫による胆汁うっ滞)
- 糖尿病の急な悪化や新規発症
進行を示す画像所見と早期発見の重要性
Pancreatic Cancer
症状が出る前に、画像上の変化を捉えることが鍵です。
膵嚢胞(IPMNを含む)
膵に液体がたまった袋状の変化。多くは良性ですが、一部は悪性や将来的に悪性化の可能性があり、定期的な精密検査が重要です。IPMN は膵管内に粘液が溜まり膵管が拡張して嚢胞状に見えます。
膵の限局的萎縮やくびれ
過去の炎症や腫瘍の影響で一部が痩せる・細くなる所見。膵管異常や嚢胞と併存時は前がん病変や膵がんの可能性もあり専門的評価が必要です。
主膵管・分枝膵管の異常
拡張/狭窄/途絶は腫瘍や炎症のサイン。特に主膵管の高度拡張(例: 10mm以上)や途絶は注意が必要です。
膵石灰化
慢性炎症の結果としてカルシウム沈着を認める所見。背景に慢性膵炎がある場合、将来的な発がんリスク上昇が報告されており、定期的フォローが推奨されます。
膵臓の異常値:アミラーゼ・腫瘍マーカー
Pancreatic Cancer
血液・尿アミラーゼ、腫瘍マーカー(CA19-9 など)は“手掛かり”。画像検査と併用評価が重要です。
アミラーゼ
膵臓・唾液腺由来の消化酵素。高値で急性膵炎や膵管異常などを疑いますが、膵外要因でも上昇しうるため他検査と併せて判断します。
腫瘍マーカー(CA19-9 ほか)
膵がんで上昇することがありますが、初期は正常のこともあり、良性疾患でも上昇し得るため、補助指標として用います。
膵臓がんの早期発見をするための検査
Examination and Diagnosis of Pancreatic Cancer
進行段階に応じて、段階的に検査を組み合わせます。
第1段階:症状がない時のスクリーニング検査
- 血液検査・尿検査(アミラーゼ)
- 血清アミラーゼ:膵細胞破壊時に上昇、機能低下で低値となることも
- 尿アミラーゼ:高値で膵異常を疑うが補助的に評価
- 腫瘍マーカー(CA19-9、CEA、DUPAN-2):進行例で上昇しやすく、異常時は画像検査へ
第2段階:健診異常や症状がある場合の画像検査
- 超音波(エコー):位置・サイズ・腫瘤の有無を確認(体格や技術で限界あり)
- MRI-MRCP:膵管・胆管の評価。MRCPは造影剤が不要であり体への負担が少ない
- CT(造影):腫瘍の描出と周囲臓器・リンパ節転移の評価に有用
第3段階:がんが疑われる場合の確定診断検査
- EUS(超音波内視鏡):微小病変や嚢胞の検出に有用。EUS-FNAで組織採取が可能
- 生検(EUS-FNA、ERCP):確定診断を行う。ERCPは急性膵炎のリスクに配慮
膵臓がんの治療
Treatment of Pancreatic Cancer
進行度・切除可能性に応じて、手術・薬物療法・放射線療法を組み合わせます。
超早期発見(ステージ0~1A)
- 上皮内がんや1cm以内の腫瘍では、腹腔鏡手術による部分切除が可能な場合があります。
- 腫瘍が小さい場合は、膵機能を温存できる期待があります。
- 状況により化学療法が不要なこともあります。
早期発見(ステージ1B~2)
- 手術(腹腔鏡/開腹)による切除が主体。
- 再発抑制を目的に術後化学療法を行うことが一般的です。
境界切除可能(Borderline)
- 化学療法/化学放射線療法を先行し、腫瘍縮小後に切除可否を再評価。
- 縮小に成功すれば手術が可能となることがあります。
切除不能(進行がん)
- 化学療法を中心に、必要に応じて放射線療法を併用。
- 腫瘍増殖を抑え、症状緩和・QOL維持を目指します。
治療方針の決定
進行の速さ・症状の乏しさから治療開始が遅れがちですが、早期発見できれば膵機能温存の可能性があります。発見が遅れた場合でも、化学療法/放射線療法の組み合わせで腫瘍制御を図り、患者様ごとの状態に合わせて最適な治療を選択します。