本文へスキップ

Helicobacter pylori

ピロリ菌感染

ピロリ菌の感染経路から検査・除菌治療、関連疾患・胃がんリスクまで。必要な情報をわかりやすく整理しています。

ピロリ菌は どのように感染するの?

Transmission of Helicobacter pylori

病気の基本を押さえ、適切なフォローにつなげましょう。

家庭内での感染

幼少期(おおむね5歳頃まで)に、親子間の口移し箸・スプーンの共用などを介して感染すると考えられています。幼少期に感染すると、治療しない限り長期に持続します。

不衛生な環境における感染

十分に衛生管理されていない水や食品からの経口感染が報告されています。現在の日本ではまれですが、幼少期に井戸水等を使用していた方は感染歴がある可能性があります。

医療現場における感染

海外では、器具の消毒不備による集団感染が報告されています。日本国内の基準では極めて稀ですが、医療機関でも適切な感染対策が求められます。

ポイント: ピロリ菌は幼少期の感染が中心で、大人になってから新たに胃に定着することはほとんどありません。心配な方は、まず検査をご相談ください。

ピロリ菌とは?

What is Helicobacter pylori?

病気の基本を押さえ、適切なフォローにつなげましょう。

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に住みつく細菌です。感染すると、 胃炎・胃/十二指腸潰瘍・胃がんなどの原因・リスク因子となります。 一度感染すると除菌治療を行わない限り持続するとされ、40歳以上の方や、 家族に感染者がいる方は、症状が乏しくても検査を検討すると安心です。

当院では、ピロリ菌の感染有無を調べる各種検査と、結果に応じた除菌治療に対応しています。 胃の症状が続く・不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

ご注意: 保険診療でピロリ菌の検査・治療を行う場合、 胃カメラ(上部消化管内視鏡)で胃がんがないことを事前に確認する必要があります。胃カメラを行わない検査のみをご希望の場合は自費診療となります。

放置すると 胃がんになる?

Risks associated with persistent H. pylori infection

病気の基本を押さえ、適切なフォローにつなげましょう。

ピロリ菌感染を長期間放置すると、まず慢性胃炎(萎縮性胃炎)が進行し、一部で胃がんの原因になります。 除菌により発がんリスクを低減できると報告されていますが、除菌後でもゼロにはならないため、 医師の指示に従って定期的な胃カメラ検査が大切です。

慢性胃炎・萎縮性胃炎

ピロリ菌により胃粘膜の炎症が持続し、やがて粘膜が薄くなる萎縮性胃炎へ進むことがあります。慢性胃炎の詳細はこちら

胃がん

萎縮性胃炎を背景に胃がんが発生しやすくなることが知られています。除菌後も発生の可能性は残るため、経過観察が重要です。胃がんの詳細はこちら

胃MALTリンパ腫

胃の粘膜にあるリンパ組織(MALT)由来の悪性腫瘍で、多くがピロリ菌感染を背景とすると言われています。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の粘膜に深い傷(潰瘍)ができ、痛みや出血の原因となります。薬剤(NSAIDsなど)も別の原因になり得ます。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の詳細はこちら

突発性血小板減少性紫斑病

血小板が減少し、出血しやすい・止まりにくいなどの症状が現れます。発症者の一部にピロリ菌感染が認められます。

慢性じんましん

一部の慢性じんましんは、ピロリ菌感染との関連が指摘されています。皮膚のミミズ腫れやかゆみを伴います。

ピロリ菌の検査・診断

Testing and diagnosis of H. pylori infection

適切な検査で現状を評価し、必要な治療につなげます。

胃カメラ検査によって行う検査

詳細は胃カメラ(上部消化管内視鏡)のページもご参照ください。

  • 迅速ウレアーゼ検査

    内視鏡で採取した組織のウレアーゼ活性を確認して感染を判定。短時間で結果が出ます。除菌判定には用いません。

  • 鏡検法

    採取組織を固定し、顕微鏡で菌体を直接観察します。精度はやや低めです。

  • 培養法

    採取組織を培養し、ピロリ菌の有無を確認。判定まで約1週間を要します。

胃カメラ検査以外の検査方法

  • 尿素呼気試験

    ウレアーゼにより尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解される仕組みを利用。正確性が高く、除菌判定にも適します(検査前の飲食制限あり)。

  • 血中抗ピロリ菌抗体

    採血で抗ピロリIgGを測定。除菌判定には使用しません。

  • 尿中抗ピロリ菌抗体

    採尿で抗体を測定。簡便でスクリーニングに向きます。

  • 便中ピロリ菌抗原

    便中の抗原を検出。感染の有無、除菌判定のいずれにも利用できます。

注意点

保険診療でピロリ菌の検査・治療を行う場合は、治療前に胃カメラで胃がんがないことの確認が必要です。 胃カメラを使用しない検査のみを行う場合は自費診療となります。

ピロリ菌の除菌治療

Eradication therapy

状態に合わせた治療を選択し、継続的にフォローします。

原則として、まず一次除菌を行い、8週間後に除菌判定(ピロリ菌検査)を実施します。一次で不成功の場合、 除菌薬の内容を一部変更して二次除菌を行い、再度8週間後に判定します。一次で約90%、二次までで約98%が成功すると報告されています。

※ 三次除菌以降は自費診療となる場合があります。

一次除菌

胃酸分泌抑制薬1種類と、抗菌薬2種類(計3剤)を、1日2回・7日間内服します。終了後、8週間後に除菌判定検査を行います。

二次除菌

抗菌薬のうち1種類を変更した3剤併用を、1日2回・7日間内服します。終了後、8週間後に除菌判定検査を行います。

ピロリ菌感染のよくある質問

H. pylori

よくある質問

家族がピロリ菌陽性の場合、自分も感染している可能性が高いのはなぜ?

国内の感染の多くが親から子への経口感染(口移しや箸・スプーンの共用など)と考えられているためです。ご家族が陽性の際はご自身の検査もご検討ください。

キスでピロリ菌はうつりますか?

一般にキスで感染することはないとされています。ピロリ菌は主に5歳頃までに感染・定着すると考えられています。

なぜ大人は感染しにくいのですか?

胃酸の酸性度や免疫が未発達な幼少期に感染・定着しやすいためです。個人差はありますが、成人後の新規感染・定着は稀とされています。

水道水をそのまま飲んでも大丈夫?

現在の日本では、水道水からの感染はほとんど心配ないとされています。より安全を重視する場合は、煮沸してから飲用すると安心です。

ピロリ菌に感染しても自覚症状が出ないことはありますか?

感染してもすぐに症状が出ないことが多く、慢性胃炎や潰瘍、胃がんなどが発症してはじめて症状が現れることがあります。気になる場合は症状の有無にかかわらずご相談ください。