Functional Dyspepsia
機能性ディスペプシア
胃カメラで異常が見つからなくても続く、みぞおちの痛みや胃もたれ。原因と治療、生活の整え方をわかりやすく解説します。
目次
機能性ディスペプシアとは?
What is Functional Dyspepsia
病気の基本を押さえ、適切なフォローにつなげましょう。
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia, FD)は、胃カメラなどの検査で明らかな炎症や潰瘍が見つからないにもかかわらず、みぞおちの痛み・胃もたれ・胃の不快感・膨満感などが続く状態を指します。
代表的な症状パターンとして、食後のつらさ(早期にお腹がいっぱいになる・食後の張り感が強い)、心窩部(みぞおち)の症状(痛み・焼けるような感じ)が挙げられます。症状は良くなったり悪くなったりを繰り返し、体調やストレス、食事内容に影響されやすいのが特徴です。
日本でも少なくない方に見られる身近な疾患で、食事が楽しめない・すぐ満腹になるなど、日常生活の質に影響が出ることがあります。検査で重大な病気が隠れていないかを確認(除外)した上で、適切な治療と生活の整え方を続けることで、症状の改善が期待できます。
関連ページ:胃カメラ検査(上部消化管の器質的疾患を除外するために有用です)
ポイント: 「検査で異常はないのに、つらい」──FDではよくある経過です。自己判断で放置せず、症状が続く・食事が負担になるときはご相談ください。
機能性ディスペプシアの症状チェック
Symptoms of Functional Dyspepsia
次のような症状が続くときは受診をご検討ください。
機能性ディスペプシアの原因
Causes of Functional Dyspepsia
器質的異常ではなく、機能や知覚の変化が関与します。
上部消化管の運動機能低下
食道・胃・十二指腸の蠕動運動が低下し、胃の拡張不全・排出遅延などが起こると、胃もたれや膨満感の原因になります。過度の飲酒や喫煙、食べ過ぎ、ストレスなどが関連します。
- 食後の胃排出遅延で張り感・重さが長引く
- 早期飽満感(少量で満腹)→ 食事量が減る・体重減少のきっかけ
- 脂質の多い食事で症状が悪化しやすい
上部消化管の知覚過敏
胃酸や脂肪などへの反応が過敏になり、軽い刺激でも不快感を感じやすくなります。暴飲暴食や不規則な食事が誘因となることがあります。
- 十二指腸は酸・脂肪に敏感に反応しやすい
- 刺激物(辛味・アルコール・炭酸など)で悪化することがある
- 胸やけ優位の場合は 逆流性食道炎 との鑑別が必要
ストレス・自律神経の乱れ
精神的ストレスは自律神経のバランスを乱し、消化管運動の低下や症状の持続につながります。十分な睡眠・休養、上手なストレス対策が重要です。
- 睡眠不足・不規則な生活で自律神経が乱れやすい
- 不安・緊張・疲労の蓄積が症状の長期化に関与
- 休養・運動・リラクゼーションの併用が有効
補足: 機能性ディスペプシアは GERD(逆流性食道炎) や 過敏性腸症候群(IBS) と重なることがあり、症状の感じ方・誘因にも共通点があります。
症状を悪化させやすい誘因の例
- 脂っこい食事・香辛料・アルコール・炭酸飲料・カフェイン
- 早食い・ドカ食い・就寝前の食事
- 喫煙、強いストレス、睡眠不足、過労
機能性ディスペプシアの検査・診断
Examination and Diagnosis of Functional Dyspepsia
症状や生活習慣の問診の上で、胃カメラ検査で他疾患を除外します。
まずは問診で、症状の経過(いつから/どのくらいの頻度/食事・ストレスとの関係)、生活習慣(食事時間・内容・睡眠・飲酒・喫煙)、既往歴や服用中の薬(NSAIDs など)について丁寧にお伺いします。
その上で、胃カメラ検査(上部消化管内視鏡)を行い、胃炎・潰瘍・腫瘍・食道炎・バレット食道・十二指腸疾患などの器質的疾患を除外します。機能性ディスペプシアは除外診断が基本となります。
- 検査中に必要に応じて生検(組織検査)を行うことがあります。
- 鎮静(静脈麻酔)にも対応し、苦痛を抑えて安全に検査を受けられます。
- ピロリ菌の既往・治療歴が不明な場合は、検査・除菌歴の確認を行います。
胸やけ主体・飲み込みにくさがある場合は 逆流性食道炎、便通異常を伴う場合は過敏性腸症候群(IBS)など、他の消化器疾患との鑑別も重要です。
注意: 体重減少、繰り返す嘔吐、黒色便・吐血、著しい貧血、嚥下困難、50歳以上で新規発症などの警告徴候がある場合は、速やかな検査が必要です。
関連ページ:胃カメラ検査(上部消化管の器質的疾患を除外します)
機能性ディスペプシアの治療
Treatment of Functional Dyspepsia
症状に合わせた薬物療法と、生活・食習慣の見直しを行います。
薬物療法
症状や体質、合併症・内服状況に応じて、薬を単剤または併用で検討します。自己判断で長期内服を続けるのではなく、効果・副作用を確認しながら調整します。
- 胃酸関連薬(PPI/H2ブロッカー):心窩部痛・灼熱感が主体のときに検討
- 粘膜保護薬:胃粘膜を守り症状の改善を後押し
- 消化管運動機能調整薬:胃排出遅延・もたれ・膨満感の改善を狙う
- 漢方薬:食後のつらさや食欲低下などの体質に合わせて選択(例:六君子湯 など)
- 抗不安薬等:不安・緊張の影響が強い場合に慎重に併用を検討
ポイント: 薬は症状の型(食後つらさ型/心窩部痛型)に合わせて選びます。効果判定・副作用チェックのため、再診での見直しを前提とします。
生活習慣・食習慣の見直し
- 睡眠・生活リズム:就寝/起床時刻を揃え、十分な睡眠を確保
- 食べ方:三食を決まった時間に、少量ずつよく噛んで食べる/就寝前2〜3時間は食べない
- 避けたい食品・飲み物:脂っこい料理、辛味、アルコール、炭酸、カフェインは控えめに
- 飲酒・喫煙:喫煙は症状悪化要因、飲酒は量と頻度を見直す
- 水分補給:小まめな水分で胃の負担を軽減
- ストレス対策:散歩・ストレッチ・趣味など、毎日少しでも解消する時間を作る
上記を続けても症状が強い場合は、薬の調整や別疾患の可能性を再評価します。自己判断で食事を極端に減らしすぎないよう注意してください。
再診の目安:2〜4週間で効果判定、未改善時は投薬の調整や検査の再検討を行います。
機能性ディスペプシアの予防策
Prevention of Functional Dyspepsia
再発予防のため、症状が落ち着いた後も継続が大切です。
- 規則正しい生活・十分な睡眠
- 決まった時間に三食、よく噛んで食べる
- 夜遅い食事・過度の飲酒や喫煙を控える
- ストレスを溜めない・こまめに解消する
生活習慣の改善
- 就寝・起床のリズムを一定にして自律神経の整いを促す
- 適度な運動(散歩・ストレッチ)で胃腸の動きをサポート
- スマホやPCは就寝前に控える(睡眠の質向上)
食習慣の改善
- 三食を決まった時間に、少量ずつよく噛んで食べる
- 脂っこい料理・辛味・アルコール・炭酸・カフェインは控えめに
- 就寝前2〜3時間は食事を避け、夜食の頻度を減らす
ストレス解消の習慣化
- 毎日「好きなことをする時間」を少しでも確保する
- 深呼吸・入浴・マインドフルネスなどリラックス法を取り入れる
- 抱え込まず、必要に応じて周囲に相談する
注意: 無理な食事制限や自己判断での薬中断は症状悪化の原因になります。改善が乏しい場合は再診で治療調整をご相談ください。